特集
今週の本棚
「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。
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今週の本棚・次回の予定
6月8日の毎日新聞書評欄は『新装版 ペルーからきた私の娘』ほか
2024/6/3 11:00 508文字6月8日の毎日新聞朝刊「今週の本棚」で掲載予定の本の主なラインアップを紹介します。 ①川畑博昭さん評『新装版 ペルーからきた私の娘』(藤本和子著・晶文社) ②岩間陽子さん評『学校と日本社会と「休むこと」 「不登校問題」から「働き方改革」まで』(保坂亨著・東京大学出版会) ③斎藤環さん評『センスの哲
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今週の本棚
松原隆一郎・評 『地域社会圏主義 増補改訂版』=山本理顕ほか著
2024/6/1 11:03 1367文字(トゥーヴァージンズ・3300円) ◇個人と都市「閾」を備えた住宅群を 本書は2012年に刊行され、翌年刊行の増補版が昨年10月に再刊された。主著者である山本理顕(りけん)氏がこの3月に「建築界のノーベル賞」とも称されるプリツカー賞に選ばれたため紹介したい。 注目点は別にもある。新年に能登が大地震
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今週の本棚・話題の本
『愛すべき娘たち』=ヒコロヒー
2024/6/1 02:01 832文字なぜこの漫画に強く惹(ひ)かれるのか、情けないことに言語化がうまくできぬまま原稿を書いている。 言わずと知れた偉大な漫画家であるよしながふみ氏が母と娘というテーマで描く『愛すべき娘たち』(白泉社・715円)だが、私が手に取ったのはごく最近であった。 読後驚いたのは刊行が2003年だったことで、20
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今週の本棚
『身代りの女』=シャロン・ボルトン著、川副智子・訳
2024/6/1 02:01 529文字(新潮文庫・1320円) 「今年度最大のミステリー話題作」。惹句(じゃっく)に偽りなし。イギリスの作家による快作。人を殺した罪の意識、身代りになった友への負い目、そして保身のための真実隠し。物語の核に人間心理の複雑な錯綜(さくそう)がある。 イギリスのパブリック・スクールを卒業しようとする若者六人
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今週の本棚・著者に聞く
千早茜さん 『グリフィスの傷』
2024/6/1 02:01 830文字◆千早茜(ちはや・あかね)さん (集英社・1760円) ◇生き延びたあかし、ここに 直木賞受賞作の長編『しろがねの葉』から1年7カ月。「傷」にまつわる10の短編を収めた新刊は、時に切れ味鋭く、時に意外な展開で、手に取る人を揺さぶる。 登場する人物は、さまざまな「傷」を抱える。高校時代にクラスで無視
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今週の本棚
『20世紀ジャズ名盤100』=大谷能生・著
2024/6/1 02:01 482文字(イースト・プレス・1760円) 福岡市の書店「本のあるところajiro」で5月にあった本書の刊行記念イベントをのぞいた。先に出版された『日本語ラップ名盤100』の著者である韻踏み夫氏とのトークは、米国から世界に拡散していった二つの音楽の共通項と特質を浮き彫りにする刺激的な試みだった。改めてジャズ
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今週の本棚・CoverDesign
鈴木成一・選 『自分を愛する本』
2024/6/1 02:01 141文字柔らかな肌色の用紙。オペーク白の地色に載せられた朴訥(ぼくとつ)なイラスト、実直に配されたタイポ。夥(おびただ)しく喧(やかま)しいその他の書籍からか、まるでノイズを遠ざけるような力強さだ。 ◆ 『自分を愛する本』(kai、服部みれい著・河出書房新社・1760円)より。
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今週の本棚・情報
ベストセラー
2024/6/1 02:01 158文字<1>鬼の花嫁 新婚編(4)(クレハ著・スターツ出版) <2>白鳥とコウモリ(上)(東野圭吾著・幻冬舎) <3>白鳥とコウモリ(下)(東野圭吾著・幻冬舎) <4>境界のメロディ ドラマCD付き特装版(宮田俊哉著・KADOKAWA) <5>変な家 文庫版(雨穴著・飛鳥新社)(ベストセラー日販・文庫=
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今週の本棚・編集後記
うかつでした…
2024/6/1 02:01 161文字うかつでした。中島京子さんが今週の紙面で紹介している『女の子たち風船爆弾をつくる』。本の題の「女の子」「風船」とだけ耳にして、明るい内容の小説なのかと思ってしまいました。兵士だけでなく、街で暮らす「女の子」を含む多くの人を巻き込むのが戦争です。その悲惨さに、本を読みつつ思いをはせました。(代)<デ
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今週の本棚
佐藤優・評 『世界最強の地政学』=奥山真司・著
2024/6/1 02:00 2100文字(文春新書・1045円) ◇リアリズムに基づいた外交を見渡す わが国における地政学の第一人者である奥山真司氏による傑作だ。アングロサクソン(英米)流の地政学に関する最良の教科書でもある。 奥山氏は、地政学は本質において学問ではないという立場を取り、こう述べる。<私の考えでは、実際の国際政治や安全保
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今週の本棚
ジョエル・ヨース評 『大邱の敵産家屋 地域コミュニティと市民運動』=松井理恵・著
2024/6/1 02:00 1391文字(共和国・2970円) ◇建て付けの悪い扉をこじあける道 日本と韓国。建て付けが悪く開かなくなった扉のように、両国の歩み寄りを阻んでいるものがある。対岸の国を、20世紀前半の歴史というレンズを通してのぞいてしまう傾向は、2024年の今も、顕著である。もちろん、加害と被害という点では、立場は逆。扉を
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今週の本棚
橋爪大三郎・評 『はじめての橋本治論』=千木良悠子・著
2024/6/1 02:00 1426文字◆千木良(ちぎら)悠子・著 (河出書房新社・3850円) ◇空前絶後のスケールがスケッチされた 「橋本治愛」がどのページからも溢(あふ)れている。批評だが批評を超えている。こんな本を書いてもらえば誰だって涙が出るだろう。 橋本治は二○一九年に亡くなった。作家、イラストレーター、批評家、劇作家、文学
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今週の本棚
中島京子・評 『女の子たち風船爆弾をつくる』=小林エリカ・著
2024/6/1 02:00 1353文字(文藝春秋・2750円) ◇女学生らが、担わされた戦争 風船爆弾とは、戦争中に作られた気球爆弾で、偏西風に乗って敵の本土アメリカまで飛び、直接攻撃を仕掛けることを目的として作られた。「ふ号」兵器と呼ばれ、製造は日本各地でおこなわれたという。ドローン開発よりはるか昔に本当にあった無人爆撃で、実戦に使
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今週の本棚
『体験格差』=今井悠介・著
2024/6/1 02:00 502文字(講談社現代新書・990円) ある日ある女性の一人息子が正座し、「サッカーがしたいです」と泣く。この光景から始まる。働きづめの母を思い、小学生の彼が封印してきた願いだ。日常的スポーツにさえ「裕福な家庭」「低所得家庭」の格差がある。 生活費・学費の格差が生む親から子への貧困連鎖はすでに指摘される。し
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今週の本棚
『政党政治家と近代日本 前田米蔵の軌跡』=古川隆久・著
2024/6/1 02:00 497文字(人文書院・4950円) 戦前の2大保守政党の一翼で今の自民党の源流のひとつでもある立憲政友会の政治家、前田米蔵(1882~1954年)の軌跡を描く。 前田は弁護士などを経て17年に35歳で初当選、43歳で政友会幹事長。32年の5・15事件で政党内閣が倒れた後、政党と議会政治を守ろうと奔走した。大
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今週の本棚
『進撃の「ガチ中華」』=近藤大介・著
2024/6/1 02:00 498文字(講談社・1650円) 北京大に留学し、中国や朝鮮半島を中心とする東アジア取材をライフワークにする著者は外交や政治・経済に関する本が多いが、本書は東京などで最近増えてきたという日本風にアレンジしない本場そのままの中華料理「ガチ中華」がテーマ。コロナ禍やビザの煩雑化で中国に行く機会が減り、ストレスが
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今週の本棚・次回の予定
6月1日の毎日新聞書評面は『世界最強の地政学』ほか
2024/5/27 11:00 458文字6月1日の毎日新聞朝刊「今週の本棚」で掲載予定の本の主なラインアップを紹介します。 ①佐藤優さん評『世界最強の地政学』(奥山真司著・文春新書) ②ジョエル・ヨースさん評『大邱の敵産家屋 地域コミュニティと市民運動』(松井理恵著・共和国) ③中島京子さん評『女の子たち風船爆弾をつくる』(小林エリカ著
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今週の本棚・CoverDesign
鈴木成一・選 『伴走者は落ち着けない』
2024/5/25 02:01 129文字「はけ者着…」? ではなくヨコ組みのタイトルでした。最近の傾向だろうか、見せ場や中心を欠いたフラットな、テキスタイルのような表面。その分、存在自体が際立つ。 ◆ 『伴走者は落ち着けない』(インベカヲリ★著・ライフサイエンス出版・2200円)より。
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今週の本棚
磯田道史・評 『貝輪の考古学』=忍澤成視・著
2024/5/25 02:01 1376文字◆忍澤成視(おしざわ・なるみ)・著 (新泉社・1万3200円) ◇日本列島人の忘れられた装身具史 「今の人は結婚式でダイヤの指輪を交換するけれど、縄文人や弥生人はどうしていたの?」。私は日本文教出版の教科書執筆者。歴史教科書で上記のコラムを考えたが自分でボツにした。代わりに、地震・津波・富士山噴火
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今週の本棚
『2022年のモスクワで、反戦を訴える』=マリーナ・オフシャンニコワ著、武隈喜一、片岡静・訳
2024/5/25 02:01 449文字(講談社・1980円) 母国のウクライナ侵攻に抗議し、所属するロシア政府系テレビ局のニュース番組中に「NO WAR」と書かれた反戦ポスターを掲げた女性ジャーナリストの手記。「善と自由」のため勇気ある行動に踏み切った経緯や、職を失い、逮捕され自宅軟禁中に長女とフランスに亡命するまでの苦闘が克明に描か
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