歯科技工士の代診行為が横行した背景には歯科医師不足があったと思われるが、“需給過剰”とされるようになったのはいつからだろう。
以下、榊原悠紀田郎「歯科保健医療小史」(2002年、医歯薬出版)より。
「人口10万あたり50人位が適当」という厚生省説を支持すると、
歯科医師の需給過剰は、昭和60年くらいからか。地方差もあるだろうが。
なお、2012年12月31日時点の人口10 万対歯科医師数は80.4人である。ADAの調査では、2013年時点のアメリカの人口10万対歯科医師数は61.7人。
(ライオン株式会社「日本・アメリカ・スウェーデン 3カ国のオーラルケア意識調査 Vol.1」2014年)
3人に1人(34.9%)が年2回の歯科健診を受けるアメリカで、人口10万対歯科医師数は61.7人。半数以上(57.7%)が定期健診に行かない日本で、同80.4人。現状を肯定すれば、やはり過剰なのかもしれない。しかし、我が国のこの口腔保健への意識の低さを良しとするか否かは、また別問題なのだ。医師数をつい最近まで過剰としていた厚労省の言い分を素直に飲むのも、医療従事者としてはヘタレであろう。日本の高齢者が医科を受診するように歯科を受診したなら、一気に歯科医不足になる可能性だってある。歯科医療従事者はその歯科軽視、医科歯科格差をこそ追及すべきだ。
総義歯専門で治療椅子を有し、難症例ばかり扱った歯科技工士もいた。歯科医療需要の急増はもちろん、患者の要求が高度化してきたことも「非合法歯科医療が行われ」た背景だと思う。
歯科医師の需給過剰は「高度経済成長」のせい。うーむ。
歯科医師会は開業規制ではなく、病院歯科や研究機関など歯科医師の活用の場、ひいては業務範囲の拡大に努力すべきだったと思うが、しかし。歯科診療所の増加で、大学附属病院歯科は逆にその力を低下させてしまうのである。なんという悪循環。
で、臨床研修制度が生まれると。しかし最近の若手歯科医師の技工能力の低下が、それで補えるかといえば大いに疑問だ。
実地試験を復活するか、臨床歯科技工士制度を発足させるべきだと思う。
以下、榊原悠紀田郎「歯科保健医療小史」(2002年、医歯薬出版)より。
敗戦時の歯科医師数は正確には明らかではないが、1948(昭和23)年は、14,929人で、人口10万あたりでは31.2人であって、毎年900〜1,000人程度の割合で増加していた。
1947(昭和22)年には第一次ベビーブームが到来し、人口の増加が予測されたこともあって、歯科医療の供給について将来的な不安が予想された。1956年(昭和31)年には、この傾向について大西栄蔵と高木圭二郎が、歯科医療関係者および歯科医療施設についての広範な資料を検討した結果、歯科医療の供給がやや不足していることを指摘している。また、1963(昭和38)年に、厚生省歯科衛生課は「将来の歯科医師の需給について」を発表して、「歯科医師数は人口10万あたり50人位が適当であろう」としている。
「人口10万あたり50人位が適当」という厚生省説を支持すると、
歯科医師の需給過剰は、昭和60年くらいからか。地方差もあるだろうが。
なお、2012年12月31日時点の人口10 万対歯科医師数は80.4人である。ADAの調査では、2013年時点のアメリカの人口10万対歯科医師数は61.7人。
(ライオン株式会社「日本・アメリカ・スウェーデン 3カ国のオーラルケア意識調査 Vol.1」2014年)
3人に1人(34.9%)が年2回の歯科健診を受けるアメリカで、人口10万対歯科医師数は61.7人。半数以上(57.7%)が定期健診に行かない日本で、同80.4人。現状を肯定すれば、やはり過剰なのかもしれない。しかし、我が国のこの口腔保健への意識の低さを良しとするか否かは、また別問題なのだ。医師数をつい最近まで過剰としていた厚労省の言い分を素直に飲むのも、医療従事者としてはヘタレであろう。日本の高齢者が医科を受診するように歯科を受診したなら、一気に歯科医不足になる可能性だってある。歯科医療従事者はその歯科軽視、医科歯科格差をこそ追及すべきだ。
この時期には精密鋳造やポーセレンワークなどの新技術導入に伴って、歯科技工の仕事を歯科技工所に外注する診療所が増加し、その結果、歯科技工の分野が充実するようになった。その一方で、歯科医療需要が急増したために、九州、四国、中国地方の一部地区で歯科技工士による非合法歯科医療が行われるなどということが起きた。
総義歯専門で治療椅子を有し、難症例ばかり扱った歯科技工士もいた。歯科医療需要の急増はもちろん、患者の要求が高度化してきたことも「非合法歯科医療が行われ」た背景だと思う。
昭和30年代から始まった高度経済成長は、多くの歯科大学の創設を招き、1967(昭和42)年からはそれらの新設歯科大学を卒業した歯科医師が急増することとなり、過剰供給に陥った一部の地域では、歯科医師会による「開業規制」が行われるという現象をも引き起こした。
歯科医師の需給過剰は「高度経済成長」のせい。うーむ。
1973(昭和48)年に日本歯科医師会は内部に「適正配置委員会」を設置してその対応をしたが、自由開業医制に抵触するということで公正取引委員会が介入するという一幕もあった。これに対して、1984(昭和59)年、需給の均衡をはかろうと厚生省は歯科医師需給に関する検討委員会を設けて検討を重ね、1986(昭和61)年7月に「歯科医師需給に関する検討委員会最終意見」を答申した。そのなかで「昭和70年度(1995年)を目途として歯科医師の新規参入を最小限20%削減する」ということを提言している。
歯科医師会は開業規制ではなく、病院歯科や研究機関など歯科医師の活用の場、ひいては業務範囲の拡大に努力すべきだったと思うが、しかし。歯科診療所の増加で、大学附属病院歯科は逆にその力を低下させてしまうのである。なんという悪循環。
実地試験は1984(昭和55)年度から廃止された。
しかし、皮肉なことに、1980(昭和55)年代に入るころから、歯科診療所の都市集中が目立つようになり、歯科大学附属病院の外来患者に減少傾向がみられるようになった。そして、附属病院での臨床実習にも支障をきたす大学が現れ、実地修練のかなりの部分を見学で済ませるようになってしまった。その結果、附属病院での臨床実習期間中に、実際の患者の口に触れたことがないという学生が現れるようになった。こうして新規参入歯科医師の臨床技能が低下しはじめ、1990年代になると実地試験の復活が必要だという意見が出されるようになった。
で、臨床研修制度が生まれると。しかし最近の若手歯科医師の技工能力の低下が、それで補えるかといえば大いに疑問だ。
実地試験を復活するか、臨床歯科技工士制度を発足させるべきだと思う。