根管治療に区切りをつける、最終処置としての根管充填をする際には、根管内の原因除去後、根管拡大をおこないます。 

 現在、根管充填剤としてガッタ パーチャ*という、熱可塑性でゴム様の材料を注入するのが治療法の主流ですが、その際にスムーズに事が運ぶように行われる根管拡大こそ、根管充填を本当の意味で成功させるための鍵になります。

 どういうことかというと、ガッタ パーチャを充分に隅々まで入れようとすれば、ある程度おおきく(ひろく)根管が拡大されていた方がたやすいのです。しかしここでの問題は、根管充填にばかり目が行ってしまうと、拡大しすぎてしまい歯の強度を損なってしまう点です。

 実は、私が歯学生の1970年代では、根管拡大のために指に、リーマー**だこができるくらいではないと、一人前ではないと言われ、必要以上に拡大するきらいがありました。 しかし拡大しすぎて歯の強度を損ねると、歯根破折という即抜歯の事態になる恐れがあるのです。

 つまり、歯根の破折に繋がらないように根管拡大をしつつ、いかに根管充填を成功させるかという、一番大切な肝の部分を歯科医師が問題なくこなせるかが、本当の意味で患者さんの歯の健康に貢献することになります。(大)

 *ガッタ パーチャ(gutta-percha):《植》グッタ ぺルカから採れる樹脂で、ゴム質状の物質。電気の絶縁体、歯科治療、ゴルフボールに使われる。

 **リーマー(reamer):孔の直径を寸法正しく、美しく仕上げるための工具。