DSC01720

 矯正治療をするに当たり、患者さんにとって、主訴がクリアー(目標をこえる。基準を満たす。)されれば、期間は短く、費用的にも少なく、また抜歯もしないに越したことはないと、思うのは当然のことかも知れません。

DSC01775

 一方で本来、医療に携わる者がとるべき臨床姿勢は、治療による長期的な健康維持達成のため、審美性のみならず機能回復まで考慮して、必要な時間、費用、抜歯の有無を決定しなければならない筈です。

DSC01856

 矯正治療において必要な時間は、患者さんの協力度によっても左右されますが、歯の移動距離によります。なぜならそれには、歯が動くメカニズム(機構。仕組み。)が関係しているからです。

DSC01842

 そのメカニズムとは、弱い持続的な力を歯に掛け続けることで、動く側の骨が貧血状態になり、吸収してできたスペース(空間)に歯が移動します。 移動後、今まで歯があった処に残されたスペースに、新たな骨ができる準備が整うのを待ちます。この時の適切なスピードは、2週間×2の約1か月で1mmと言われています。

DSC01836

 もしこれを守らず、力が強かったり速すぎたりすると、歯根が吸収したり歯槽骨ができない恐れがあります。つまり、矯正の治療期間は、願望や都合で決まる性質のものではないのです。

DSC01820

 また抜歯に関しても、するしないで矯正後に歯がおさまる位置が決まり、特に前歯は鼻より下の側貌に大きな影響を与えます。例えば、顎が劣成長で歯の巾の合計が大の、ディスクレパンシィ(不一致。相違。)の場合を考えてみましょう。立て込んで重なり合った歯列を、非抜歯で矯正すると大きなアーチ(歯列弓)になり、顎の成長も関係しますが、お口元は術後前方に位置する結果になります。

DSC01824

 費用に関しては、患者さんはその歯科医に、診査、診断、治療計画、そしてメンテナンスに至るまで詳しい説明を聞いたうえで、呈示された費用で信頼して任せられると思えば、治療の依頼をすればいいことです。(大)