抜歯を受けるのが好きな人は誰もいません。抜かずに済むようにするべきです。

 それには症状として出た、痛みや腫れが仮におさまったとしても、根本的な病気の解決のために、きちんと治療を受ける必要があります。

 時々、歯を抜かないことを最優先にして欲しいと、来院される患者さんがいらっしゃいますが、その気になれば他の歯とつなげるなり、噛み合せをさせずに本来の機能を他の歯に委ねれば、抜歯は避けられましょう。

 が果して、そこまでして抜歯を回避して、問題が残らないのでしょうか?

 それが大有りなのです。他の歯とつなげると、その歯も巻き添えを食うことになるだろうし、抜歯をしないで残すことでかわりに歯槽骨を失うことになりかねないのです。 場合によっては、1本で済む抜歯が2本3本と、増えることさえあります。

 歯も体の一部でしょうが、骨も大事な体の一部の筈です。 そのあとの処置、例えば義歯になった場合の、安定や維持に問題を残すことになってしまうのです。

 私が抜歯の臨床的基準で、常々取っているスタンス(事に当たる姿勢)は、まず、隣在歯に悪影響が及んでいないのか/ 抜歯を遅らせることで歯槽骨に問題が残らないのか/ 歯性病巣感染の原因になっていないのか/ 対象歯が機能しているのか/ 口腔内の環境を悪くしてはいないのか/ 等です。

 最後に付け加えたいのは、1本の歯に拘るのではなく、お口全体を見渡した包括的な判断が、真の健康維持に結びつくことになる、という点です。(大)